Sunday, August 16, 2020

暑さ、台風、停電、ニューファンと沖縄で暮らすこと。大事な思い出も一つ。



らーは、暑いのが極端に苦手な犬種。「沖縄でニューファン」というと、無謀極まりないと否定的な意見が聞こえてきそうだけど、実際わたしも「沖縄でニューファンを飼うなんて、犬が可哀想じゃないか」と非難されたこともあるけれど、日本は高温多湿、北海道や軽井沢など避暑地を除いて、沖縄に限らずほぼどこにいても暑さの条件は同じだ。 むしろ沖縄は日本の中では、ニューファンには都合がいい場所だとわたしは考える。


沖縄の夏は長いけれど、本州の一部の地域に比べれば日中の気温も穏やかで、木陰に入れば風が心地よい。その上、海へのアクセスは簡単なこと、泳ぎが得意なニューファンが暮らすにはそう悪い場所ではない。でも、一つだけ確かに、沖縄でニューファンのような暑さに弱い犬と暮らすことは本当に無謀なのこと、そう認めなくてはならないことがある。


ほぼ毎年のようにわたしは夏になると台風による停電に恐怖した。


蒸し暑くなるのに停電でクーラーが使えない、冷凍庫に備蓄している肉も台無しになる。
わたしの家は賃貸のアパートで、部屋から続く専用の庭があり、住居面積の半分程度の広さがある。だから、台風でもらーが庭に出たがれば、出してあげられた。4つの脚を踏ん張って70キロ近い体重のらーが、荒れ狂う風雨に立ち向かう様にびしょ濡れになって耐えている姿を思い出す。


蒸し暑い部屋の中よりも、庭を好む気持ちはよくわかる。らーは停電になると一日に何度も庭と部屋を行き来して、家中を水浸しにした。
停電になると洗濯機は使えない、家中のタオルを全部使い果した。このアパートは停電時には水道のポンプアップができなくなるので屋根の水タンクが空になれば、次に電気が復旧するまで断水にもなる。


50時間近い停電を何度も経験した。台風が去り、商業地域や拓けた場所から徐々に電気が復旧して、わたしの家から坂を上がったところの大きな道路に面する住宅の灯りが次々に灯っていく、それなのに、その後丸一日もかかってやっと我が家が復旧するというお決まりのパターン、諦めて待つしかなかった。


数日の停電は何度も経験済み、それでも、らーの介護中に起きた停電は、過去のどんな長い停電よりも長く続き心身ともに疲労したことを今でも鮮明に覚えている。わたし一人ならば、停電など無縁の那覇や宜野湾の都会のホテルにでも泊まればいい。でも、寝たきりの大型犬を連れていける場所なんてあるわけがない。


同じアパートの住民のうち我が家を除いて2軒程度がアパートに残っていた、他は、県内の停電していない身内の家に身を寄せていたのだと思う。
1週間も続いた停電と断水、蒸し暑い中で起き上がることもできないらーをウチワで扇ぎ続けて過ごした。今日、2020年8月9日の今日、台風5号の影響で風雨が激しくなる外を眺めながら書き残そうと思う。




大きな被害をもたらした2つの連続した2018年の台風。 わたしの家はすぐに断水し、ご近所さんが大きな水ボトルを持ってきてくれたのを節約しながら使い、なんとか生き延びた。 食べ物は都市部に住むシッターさんにお願いして補充してもらった。 シッターさんがいる間は、ウチワで扇ぐのを交代してもらえるのでわたしは少し休むことができた。


スマホの充電もできない、バッテリーの残量を気にして丁寧に使わなくてはならなかった。そんな時に、暇つぶしのLINEが来ると正直イラついた。 外国に住む男性から来るこちらの状況をまるで理解していない押し付けのLINEには本当に腹が立った。「車で充電すれば?」という押し付けのアドバイスにも腹が立つだけだった。 やれるならとっくにやっている。


東日本の大きな地震の時、避難所での生活を送った人々のことを想像して、わたしも負けてはいけないと自分に言い聞かせて電気が復旧するのをただ待った。


1つの台風が過ぎて、次の台風が来るわずか1日のうちのわずか数時間だけ電気が復旧した、そう思ったらすぐに再び停電しそこから数日停電が続いた。疲労しきって何も考えることができなかった。ただただらーが少しでも快適に過ごすことができるように、そう願って、ウチワで扇ぎ続けた。


介護中の長い停電は苦しい経験、それでもわたしには一生忘れたくない、大切な思い出になった。2回目の台風が去ろうとしている夜、停電の中、Yuちゃんが家電用の緊急バッテリーを2個持って駆けつけてくれた。バッテリーを職場で充電し、ローソクやお肉、お野菜、デザートなどスーパーで買える食材を買いこんで、電気も水もない暗い我が家にきてくれた。


その夜、数日ぶりに、ほぼ一晩、ウチワから解放されて扇風機を回した。 
ディナーの用意をしてもらう間、大きな鍋に入れた水で、数日ぶりに身体を清めた。 
キャンドルライトの中、Yuちゃんのスマホで音楽を聴きながら、Yuちゃんが用意してくれたディナーを一緒に食べた。最高に美味しかった。


Yuちゃんがその夜に来てくれなかったら、本当に心が折れたかもしれない。その夜のキャンドルライトディナーは、まるで泥沼から奇跡の様に美しく咲く蓮の花の様に一生涯忘れたくない大切な思い出になった。 




話を締めくくらなくては!
那覇や宜野湾の都市のアパートなら、停電はほとんど起こらない。でも、沖縄においても都市部で大型犬とゆったり暮らせる条件の住居を借りるには高額な家賃を覚悟しなくてはならない。わたしの住む、うるま市は都市部に比べれば、家賃が節約できるし、らーのような超大型の犬を遊ばせる場所にも困らない。 
でも、都市部と違い、うるま市は台風の停電が頻発するし、復旧も後回しにされている。台風は沖縄にいればほぼ毎年やってくる、やっぱり、ニューファンと沖縄で暮らすというのは、わたしにとっては、無謀なことだったのかもしれない。
海はイイ